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【エッセイ】
2018.11.9

 

 

 

5才のある日。

 

 

空のペットボトルを使って、
あれこれと工作していた
息子が突然こう言いだした。

 

 

 

「ペットボトルのー
底の部分だけを残して、
ハサミで切るとねー、
ほら、コップになるでしょ!」

 

 

そんなことを言いながら、
空のペットボトルを引っ張り出し
コップを作り始めた。

 

 

熱中して作り続け、気がつくと
彼の机の上にひとつまたひとつと
コップが増えていった。

 

 

そして、完成したコップたちを見て
息子はこう言い出した。

 

「僕、コップ屋さんになる!

   このコップ120円で売る!」

 

(ほーほー、なんだか
面白い展開になってきたぞ)

 

親としては、しめしめといった感じだ。

 

 

「売るなら、コップのことを
みんなに教えてあげなきゃね」

 

 

私はそんな軽いアドバイスを
息子に伝えた。

 

 

 

 

すると、息子なりに考えたらしく・・
コップのCMを撮ると言い出した、
私は彼のカメラマンとなった。

 

 

「これはコップです。飲み物が飲めます。
口の部分は、ハサミで切ったので
少しガタガタです。
お気をつけくださいね。」

 

 

そう言って、即興でジャパネット
高田社長をやってのけた。

 

 

その場でさくっと映像の出来を確認し、
広島のおじいちゃんとおばあちゃんに
LINEで動画を送った。

 

 

 

(数分後・・)

 

 

 

「2個、買いまーす!!」

 

すぐさま返信があった。
かわいい孫のオファーだもの、
あたりまえだ。

 

気を良くした息子は、みーちゃん
(私の妹、息子にとってのおば)にも
同じものを送りつけ、その日だけで
5個の成約をとった。

 

 

 

そんな形で、息子のコップ熱は
あっという間にエスカレート、

さらにコップを作り続けた。

 

 

 

数日後・・

 

 

私が食事の支度をしていると
自宅2階のベランダで息子が
何やら通りの人に叫んでる。

 

「こんにちはーー!
い、いりませんかー?」

(ん?嫌な予感・・)

 

「こ、コップいりませんかーー?」

 

 

これには、
私もさすがに驚いた!

 

 

息子は、見ず知らずの人に
自分が作ったコップを買ってもらおうと、
ベランダからセールスしてるだった。

 

「あれ~、おかしいなぁ~?
なんで、売れないのかなぁ~?」

 

息子にとっては、
売れないことがむしろ不思議なようだ。

 

 

私は、むしろ息子のその度胸のほうが
不思議でたまらなったが、、

 

 

さらに、息子は懲りることなく
「町の人に、もっと知って
もらいたいんだよね、コップのこと」
そう言って、画用紙で作った看板を

自宅玄関に飾ってしまった。

 

 

 

 

 

息子はこうやって私に
いつも刺激をくれる。

今回の息子の姿は、
ビジネスや商いって
本来すごく純粋なものだと、
私に教えてくれた。

 

 

「いいものをいいって伝えたい」
「誰かにもっと喜んでもらいたい」

 

そんな思いが商いの源泉なのだと、
シンプルに私に伝えてくれた。

小さな小さなコップ屋さん、
その様は本当に可愛くてたまらないのだ。

 

 

 

おまけの後日談・・

 

 

 

ふたりで電車に乗ったとき、息子は
私の手を引っ張ってこう聞いた。

 

 

「あのさー、あの広告どうやって
出すのーー!?」

 

 

(ん・・?)

 

 

「ぼくのコップ、あそこに
のせたいんだけどーーー!」

 

 

そう指をさしたその先には・・

安く見積もっても広告費数十万は
するだろう、「吊り広告」があった。

 

 

親が教えたこと以上のことを軽々超えてくる。

おぬし・・、なかなかの商人やな・・

 

 

ーー
ヒモ解き職人 鈴木深雪

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